査読(さどく)とは?方法、コメント例文、依頼メールまでご紹介
目次
査読(さどく)とは?概要や意義
査読(英語ではpeer review)は学会誌等に投稿された原稿を掲載するかどうかをスクリーニングする手段です。
特定の学会が発行する「学会誌」や、大学などが発行する「紀要」に掲載する原稿について査読が行われます。
その査読を行う方のことを査読者と呼び、一般的には当該ジャーナル(学会誌や紀要)の編集委員により査読を行う候補者(多くの場合は2名)への査読依頼が行われます。
査読の上で受理(アクセプト)となった場合には掲載され、掲載不可(リジェクト)となった場合は掲載されません。その最終的な判断は査読者ではなく査読結果を受けた編集長、編集委員会で行うことが一般的です。
査読を受けた上で掲載されている論文(=査読つき論文)は査読を受けていない論文より一般的に学術的な評価が高くなります。
査読にかかる期間
査読者には査読期間は1ヶ月程度として依頼されることもありますが、査読プロセスは一度で完了しないことも多いことから投稿してから出版されるまで3~6ヶ月はかかることもあります。
査読のスタイル
査読にはいくつかのスタイルがあります。
シングルブラインド
著者からは査読者がわからないように査読を行う方法で多く採用されています。
査読者からは著者がわかるので投稿された原稿の背景も含めて内容を理解しやすくなるのがメリットです。また著者から査読者がわからないので正直で忖度のない査読が可能になります。
一方、著者に対する先入観を完全に排除することができない、また査読者が匿名になるのでコメントが丁寧性に欠ける場合があるのがデメリットになります。
ダブルブラインド
著者から査読者がわからない、かつ査読者からも著者がわからないように査読を実施する方法です。この方法を採用する場合は著者が推測できるような情報をマスキングなどで隠す必要があります。ファイル名やヘッダー、謝辞や引用にも注意が必要です。
メリットは査読者の著者への先入観を排除できる点です。著者から査読者がわからないのはシングルブラインドと同様なので正直で忖度のない査読が可能になります。
オープンピアレビュー
著者と査読者がお互いにわかる査読方法です。
メリットとしては査読プロセスの透明性が担保されるので原稿に対しての信頼性が上がることです。また査読者名が公開されることにより査読者のコメントがより丁寧になる可能性があります。
デメリットは著者と査読者が公開されることにより完全にはバイアスを避けられないことです。また査読者自身も評価される場になり、結果的に負担が増えるので査読者を探すことが困難になる場合もあります。
査読を依頼されたら?
依頼の流れ
当該ジャーナルの編集委員より査読依頼のメールが来ます。
受諾できる内容の場合、査読者を受諾してください。
査読内容を精読・返信・修正を行います。
編集長・編集委員が掲載の最終判断をします。
受諾すべきか?
査読者候補に選ばれるということはその専門分野において査読できる能力があると見込まれているということです。
基本的には学術団体としての信頼性を担保するプロセスの一環であり、欧米では業績としも認められることもあります。また査読経験を経て将来的な編集委員や編集長への道が開けることもあります。
基本的に後述する辞退すべき理由に該当しない場合は査読依頼は受諾するようにしましょう。
査読に対する報酬
一定の時間や労力をかけて行う査読ですが査読をすることに対しての報酬はあるのでしょうか?
結論、一般的には査読は金銭的な報酬は無く、無償で行われることが多いです。ただし金銭的報酬が支払われる場合も一部存在しているようなのでご所属の団体の規定を確認するようにしてください。
査読者を辞退すべき場合
査読を依頼された場合でも中には以下のように査読者として適さない場合もありますのでごのような内容に該当する場合は辞退を申し出るようにしましょう。
直接的関係がある
まずは該当の原稿に対して直接的な関係がある場合です。共著者になっている共同で研究を行っているなどの場合は投稿者本人が査読できないのと同じように査読者として適しません。
誤って依頼があった場合は気づいた時点で辞退を申し出るようにしましょう。
専門外である
査読依頼を受けた方は基本的には担当する原稿の専門分野について近い、もしくは知見があるので編集委員から査読を依頼される場合が多いです。
しかしご自身の判断で原稿で取り扱っている内容が専門外で査読ができないと判断されるようであれば辞退する必要があります。
利益相反(COI)がある
COIとは(Conflict of Interest)の略で該当の原稿に対して利益相反がある場合です。
数年間の間に共著の論文がある、著者への指導経験がある、類似の研究を行っている、その他なんらかの利益が直接的ないしは間接的に発生するなどの場合は申し出るようにしてください。
期限内に対応ができない
査読期限までにどうしても対応が難しい場合は申し出るようにしましょう。
長期休暇、休職、家族の病気などが理由になる場合があります。
辞退する場合の対応
辞退する場合理由によりますが、特に専門分野でない場合などは代わりになる専門分野の査読者を編集委員へ推薦すると喜ばれる場合があるので検討してみてください。
査読依頼・お礼のメール文案
編集委員も査読者も多忙であることも多いので、依頼方法は書面での郵送ではなくメールで行われることも一般的です。
編集委員会の方など査読者へ依頼する側から査読者へのメール文案をご紹介します。
それぞれ査読の依頼、本文の送信、お礼メールを想定した文章です。
査読依頼
件名: 【○○学会雑誌第○巻】掲載原稿査読のお願い
本文:
○○大学○○研究科
○○先生
平素よりお世話になっております。
○○学会編集委員会担当の○○です。
○○学会編集委員会より○○学会雑誌第○巻に掲載予定の原稿の査読依頼がありご連絡いたしました。
ご依頼の予定の原稿タイトルを添付にてお送りいたします。
ご多忙中恐縮ではございますがそれぞれの原稿についての査読の可否を○月○日(○)までに添付の様式にてご返信いただけますと幸いです。
その他ご不明点などございましたら、本メールにご返信くださいますようお願い申し上げます。
※査読の基準については以下のURLでご参照ください
https://....
※ご担当いただく原稿は、2名での並列査読になります
※最終的な掲載、不掲載の判断は編集委員・編集委員長により行われますので、直接的にご意見が反映されない場合がありますのであらかじめご了承ください
原稿送信
件名: 【○○学会雑誌第○巻】査読受諾の御礼・原稿送信
本文:
○○大学○○研究科
○○先生
平素よりお世話になっております。
○○学会編集委員会担当の○○です。
先日は○○学会○○学会雑誌第○巻の原稿の査読につきまして査読を受諾いただき誠にありがとうございます。
早速ではございますが、添付にてご担当いただく原稿の本文をお送りいたします。
ご多忙中恐縮ではございますが添付の原稿につきまして○月○日(○)までに査読の結果を添付の様式にてご返信いただけますと幸いです。
その他ご不明点などございましたら、本メールにご返信くださいますようお願い申し上げます。
==(以下再送信の内容です)
※査読の基準については以下のURLでご参照ください
https://....
※ご担当いただく原稿は、2名での並列査読になります
※最終的な掲載、不掲載の判断は編集委員・編集委員長により行われますので、直接的にご意見が反映されない場合がありますのであらかじめご了承ください
結果受領の御礼
件名: 【○○学会雑誌第○巻】査読結果受領の御礼
本文:
○○大学○○研究科
○○先生
平素よりお世話になっております。
○○学会編集委員会担当の○○です。
ご多忙にも関わらず、早速ご担当の原稿につきまして査読結果をお送りいただきましてありがとうございました。
いただいた内容を確認した上で掲載の可否について検討してまいります。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
査読を行う際に押さえておくポイント
査読を実際に行う際の一般論としてのポイントをいくつかご紹介します。
規定・ガイドラインを確認
どのような最終的な判断(掲載・修正の上掲載・不掲載など)を行うのかどのような基準で判断するのかは学会等ジャーナルの発行元で定められている場合が多いので必ず確認してください。
下記のご紹介しているポイントも各学会の様式を確認するようにしてください。
精読
言うまでもありませんが原稿はさらっと流し読みするだけでは内容をきちんと理解できません。一文一文しっかりと精読する意識で読み込んでください。
コメントは誰が査読者かわからないように
シングルブラインド、ダブルブラインドともに著者は査読者が誰かを知らされない方法です。
コメントで査読者が誰か推測できるような記述は避けるようにしましょう。
守秘義務を守る
査読を担当することによって知り得た情報やアイデアは世に出ていないものです。その情報を盗用することや第三者に伝えることは許されません。
著者が推測できても直接連絡しない
査読者は投稿された原稿に近い分野で研究をしていることが多いことから、内容から著者が推測できることもあります。
著者が明らかにされているシングルブラインド式でやその他の理由で著者を知り得た場合でも直接著者に連絡してはいけません。
コメント欄や編集委員を通じて指摘を行うようにしましょう。
建設的・発展的なコメントを
著者は査読者が誰かわからないことから査読者のコメントは丁寧さに欠けてしまうこともあります。
査読者は指摘を行う場合でも、具体的・建設的・発展的なコメントを意識してみてください。
学術的な意義があるか
掲載にどのような基準を設けているかは発行元により異なりますが、掲載の可否について以下のような基準を設けている例があります。
「新規性」「有用性」「正確性」「明瞭性」「関連性」「創造性」「重要性」「発展性」「独創性」「内容の妥当性」「倫理性」
再査読での新たな指摘は避ける
場合によっては査読フローの中で再査読が必要な場面もあります。再査読の際には査読者・著者に時間を節約するために、できる限り新たな指摘は避けるべきです。そのために一段階目の査読で具体的な修正を念入りに確認することが重要です。
不正行為への対応
査読中に剽窃・盗用・二重投稿などが発覚した場合には担当の編集委員に報告してください。一部分だけが不正だとしてもリジェクト(不掲載・不採録)の対象となります。
その他データの捏造や改ざんも不正行為にあたりますが査読時点では検証のしようがありません。後日他者により再現しようとした際に不正が発覚する場合があります。
査読のコメント例(日本語・英語)
査読者のコメント例を日本語と英語でご紹介します。
原稿の要約
この原稿で著者は...と報告している / In this manuscript the authors report that...
修正のコメント
修正点は大きく大幅な修正(major revision)と軽微な修正(minor revision)に分かれます。
大幅な修正は原稿の根幹に関わる部分で例えば実験方法に致命的な問題がある場合などがあたります。場合によっては追加の研究が必要になるなど対応できない場合は不掲載になる場合もあります。
一方、軽微な修正は文法、誤字脱字、引用スタイルの誤りなどがあたり、著者の修正により掲載可能なものです。
いずれの指摘も具体的である必要があります。
それぞれの指摘が大幅な修正(major revision)にあたるのか軽微な修正(minor revision)にあたるのかがわかるようにコメントしてください。
大幅な修正の場合
大幅な修正が必要である / A major revision of manuscript is needed
出版前に大幅な修正が必要である / This paper requires major revision before publication.
軽微な修正の例文
いくつかの軽微な修正の後に掲載をすすめる / I recommend it for acceptance after the minor points.
図5が無い / Figure 5 is missing.
不掲載・不採録の場合の例文
不掲載・不採録を推奨します / I recommend to reject this manuscript.
掲載は推奨できません / I do not recommend acceptance of this paper.
査読に対応した演題登録システムは?
学術大会の運営者の方におすすめの査読システムはConvention Connect(コンベンションコネクト)です。
演題登録システムに査読機能が基本機能として搭載されているので演題登録から査読作業までがウェブ上でシームレスに完結します。
また査読用のフォームは完全に自由に設定できるようになっているので各学会、大会の要件に合わせて今すぐ利用開始できます。
その他、無料で利用できるホームページ作成機能や参加登録機能も付いているので試して損はありません。ぜひご検討ください!
Convention Connect
(コンベンションコネクト)
Convention Connect会議ディレクターです。数多くの学会運営準備、オンライン配信支援、ホームページ作成など実務の経験から学会開催に関するお役立ち情報を発信しています。
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